音楽と映像とガジェットの四方山話

アラ還おじさん趣味の四方山話Blog

ミニマルなオーディオ

僕がオーディオにのめり込みかけた頃、英国のピーター・ウォーカー氏率いる、Acoustical Manufacturing Co.Ltd の QUAD ブランドに興味を持ちました。アメリカの物量作戦ではなく、箱庭的にこぢんまりとしているシステムですが、商品点数も少なく、当時、プリアンプ1種、FMチューナー1種、アンプ2種、コンデンサースピーカー1種のみのラインナップ。モデルチェンジもほとんどなく、現行モデル以前の物も、修理やオーバーホールが出来る体制が取られていた会社でした。その後、ブランドのQUADが社名となり、現在は、QUAD Musikwiedergabe GmbH となっていて、同じようにモデルも少なく、修理もきくようです。変化の激しい時代のなかで、良い物を作り続けることはとても難しいと思いますが、やり続けている姿勢が素敵です。

当時のプリアンプ(モデル33)は、ピーター・ウォーカー氏の思想を反映してか、入力の切り替えボタンが、ラジオ、フォノ、AUX、テープ1、テープ2、だったと思います。家に帰ってきて、まずボリュームを回すと電源ON、そしてラジオを聴きながらアンプを温めつつ、今日どのレコードを聴こうかと考えます。レコードを鑑賞した後は、ボリュームを下げて、MINに回しきれば電源OFF。日本のオーディオメーカーでは、絶対に採用しない操作方法です。しかし、使う方がシンプルに操作し、必要最低限の操作で音楽を楽しめる、いや音楽を楽しむために余計なことをさせない、そんな思想が現れた製品でした。デザインも、黒や銀色の見慣れた物ではなく、オーディオ・セットとはおもえない、くすんだ薄い緑と、くすんだオレンジ色で、家庭の家具などとの調和を考慮していたとおもえます。いまでも、当時の製品が高値で取引されています。時々手元に置いて使ってみたい衝動にかられます。オーディオ装置は、機械ではありますが、突き詰めれば音楽を楽しむ装置なのです。機械の見た目や、豪華さ、つまみの多さは、音楽とは本来無縁な物なのです。それを教えてくれたのが、ピーター・ウォーカー氏なのです。

もう一つは、デンマークB&O社です。当時は、ヤコブ・イエンセン氏が装置をデザインし、MoMAのパーマネント・コレクションになったので、話題になりましたが、これもほとんど操作するボタンがありません。まだ赤外線リモコンのない時代ですから、ラジオコントロールで操作をしていました。プリアンプとアンプとラジオを一体化した日本でレシーバーとよばれる物と、レコードプレイヤーとスピーカーの組み合わせになります。リモコンで操作するのだからと、本体の操作ボタンをほとんどなくしたデザインでした。

このメーカーも、使う方が迷わないマン・マシン・インターフェースといいますか、ユーザー・インターフェースをそなえ、それを高度なまでにスカンジナビア・モダンに融合させていることに感動します。サブシステムとして現行モデルを購入したくなる衝動にかられます。

実際、レコードを聴く場合、アンプの電源を入れ、もし入力切り替えがレコードプレイヤーになっていれば、あとはレコードをセットして、針をおろしてボリュームを上げるだけ。能率の低いスピーカーを使っていますので、ボリュームをあげたまま針の上げ下ろしをする場合もあります。CDなら、ボリュームの操作は皆無です。

僕自身、突き詰めれば、シンプルな操作で、音楽を楽しみ、ステレオ録音というギミックを楽しむために Hi-End の装置を購入したのだとおもいます。そして、そのギミックを楽しむ部分をとりのぞいた、ただただ音楽を楽しみ、生活の中に装置が溶け込むことをミニマルなシステムに求めているのかもしれません。まぁ、サブシステムとしてそのような装置はほしいのですが、設置する場所がなく、これからもずっとほしいなぁと思い続けていくかもしれませんね。